
2012年03月08日
子どもの商品価値
さてさて、たまには保育のマジな話もしなきゃです。
民主党政権下で「総合子ども園」構想の具体化に向け、2015年創設を目指して動き始めましたね。
「それって、結局『認定子ども園』と同じじゃないの?」と思われるかもしれませんが、微妙に違います。
と言うよりも、保育に携わっている保育士や幼稚園教諭に言わせりゃぁ「全然ちげーよっ!」という感じです。
ベースは認定子ども園を基本としているようですが・・・。
重要なところが・・・おかしな事に。
そもそも、認定子ども園というものは、「小学校就学前の子どもに対して保育(保育所的)と教育(幼稚園的)を、また保護者に対しては子育て支援を」という理念のもと、保育と教育を一体的に提供するために始まったものであり、家庭での保育に欠ける子(片親や共働きなど)も、そうでない子も利用できる施設です。
しかし、総合子ども園はどうでしょう?
政府の説明では、「2006年に発足した認定子ども園が、現時点で全国に762カ所しかないのは、保育所を管轄する厚生労働省と、幼稚園を管轄する文部科学所が別々に補助金を出すため、手続きが煩雑だからだ。しかし、新制度・総合子ども園は、内閣府の補助金に一本化するため、総合子ども園へ移行する保育所・幼稚園が増えるでしょう。そうなれば、たくさんの子ども達が保育と幼児教育を受けられますよ。」とのこと。
つまり、待機児童の解消をねらったわけでしょう。
どうして、幼保を一体化することで待機児童の解消が期待されるのかというと・・・
現在、全国的に「保育園が足りない!」「待機児童がいっぱい!」と言われている一方、幼稚園では定員に余裕があります。
そこで、幼保を一体化した施設とすることで、「幼稚園の施設を保育にも使って待機児童を解消しよう!」と考えたわけです。
となると、3~5才を対象としてきた幼稚園をたくさん移行して、3才未満児の待機解消に力を入れなければならないはずです。
しかしながら、新制度では、「幼稚園施設の総合子ども園への移行については、3才未満児の預け入れ(受け入れ)を義務づけない」そうです。
・・・???
それって、矛盾してません?
だって、全国で26,000人以上いると言われている待機児童の約8割は3才未満児なんですよ。
そんな「義務づけない」なんて言っちゃったら、どの幼稚園も「じゃぁ、うちはこれまで通り、3~5才児のみ受け入れるわ。」ってなっちゃいますよ。
だってだって、3才未満児の受け入れは、職員配置(対定数)や調理室の整備などなど、実はとってもお金がかかるのです。
「やりたくなけりゃ、やらなくてもいいよ」なんて、みんな「あ、そう。じゃぁ、や~らない」ってなっちゃうって!
これって、待機児童解消=少子化社会対策=若い世代への社会保障機能強化?・・・本末転倒。
さらに、認定子ども園と総合子ども園の重要な違いは、「経営形態」にあるのです。
注目したいのは、「この施設(総合子ども園)を増やすため株式会社やNPOの参入を認める。」というところです。
なんとも、信じられない。
そんなことしたら、どうなっていくかなんて素人目でも見えてきます。
「総合子ども園を普及させるためには、保育所・幼稚園の子ども園への移行が絶対だな。う~ん、でも待てよ。そんなことすると、幼稚園は絶対「OK!」って言ってこないよなぁ・・・。あ、そうだ!幼稚園は3才児の受け入れは自由ですよってことにしよう!うん、そうすればいい!でも、それじゃぁ、3才未満児の待機児童解消が弱くなっちゃうなぁ・・・困ったなぁ・・・。あ、そうだ!保育所や幼稚園以外でも経営できますよってしちゃおう!ううん、それがいい!じゃぁ、総合子ども園やりたい人?」
「え、株式会社やNPOも総合子ども園に参入できるの!?なんという、チャンス!なんという、ビッグビジネス!預けたくても預けられない子どもはたくさんいるじゃん!商売繁盛間違いなし!はーい!ウチやりまーす!」
こうなってくると、手を挙げる企業さんが増えてくるわけです。
そうなると、どうなりますか?
「う~ん、ビッグビジネスと思っていたけど、同じようなライバルが増えて、なかなか子どもが増えないなぁ。しかも、3才未満児の受け入れが増るとコストかさむしなぁ・・・。よし!経費削減作戦でいこう!まずは、先生の給料はカット!それから、給食費も安い食材やメニューに変えよう!あ、遊具も中古でいいや!それから、あれもカット、これもカット・・・」
保育の質が下がってくると思いませんか?
終いには、きっとこうなります・・・
「ちくしょう!こんなにコスト削減しても、受け入れ園児数が増えないんじゃ収益にならないぜ!どうにか、他の園と差をつけたいなぁ・・・あ、そうだ!園独自の英才教育を実施しよう!読み書き計算はあたりまえ!漢字に英語に音楽にスポーツ!あ、そうだ!ウチの園に通わせるとこんなに素晴らしい子になりますって、アピールしなきゃな。そのためには、園児の質を上げなくちゃ。よし、完成された姿を見てもらおう!」
こうして、子どもが商品になっていくわけです。
「ウチの店のバッグは最高でしょ?」と言わんばかりに「ウチの園の子ども達は天才でしょ?」と・・・。
その完成された姿をアピールするために、子ども達はどのような保育・教育指導を受けるのでしょうか?
もっと、保育と幼児教育の原点に戻ってみましょう。
子どもは、幼少期に何を学ぶべきでしょうか?
また、幼少期にしか学べないものとは何でしょうか?
飛び抜けた学力ですか?
大人顔負けの運動能力ですか?
違うはずです。
「あそびの中で」ではないですか?
一つのものを、みんなで分け合う思いやりは、机の上で育つのでしょうか?
我慢の気持ちや優しさは、ドリルを通して培われるのですか?
違うはずです。
色々と、書いてきましたが、これはあくまで個人的な意見です。
必ずしも、「そうだ!」ということではありません。
僕自身まだまだ勉強不足ですし、この制度の善し悪しは、地域によっても、とらえ方によっても様々でしょう。
しかし、ここで僕が訴えたいのは、「保育や幼児教育とは、心を育てるもの」ということです。
「三つ子の魂百まで」とは、昔の人はよく言ったものです。
保育や幼児教育とは、その子の一生を担っていることを、今一度考えさせられる今日この頃です。
MUNE
民主党政権下で「総合子ども園」構想の具体化に向け、2015年創設を目指して動き始めましたね。
「それって、結局『認定子ども園』と同じじゃないの?」と思われるかもしれませんが、微妙に違います。
と言うよりも、保育に携わっている保育士や幼稚園教諭に言わせりゃぁ「全然ちげーよっ!」という感じです。
ベースは認定子ども園を基本としているようですが・・・。
重要なところが・・・おかしな事に。
そもそも、認定子ども園というものは、「小学校就学前の子どもに対して保育(保育所的)と教育(幼稚園的)を、また保護者に対しては子育て支援を」という理念のもと、保育と教育を一体的に提供するために始まったものであり、家庭での保育に欠ける子(片親や共働きなど)も、そうでない子も利用できる施設です。
しかし、総合子ども園はどうでしょう?
政府の説明では、「2006年に発足した認定子ども園が、現時点で全国に762カ所しかないのは、保育所を管轄する厚生労働省と、幼稚園を管轄する文部科学所が別々に補助金を出すため、手続きが煩雑だからだ。しかし、新制度・総合子ども園は、内閣府の補助金に一本化するため、総合子ども園へ移行する保育所・幼稚園が増えるでしょう。そうなれば、たくさんの子ども達が保育と幼児教育を受けられますよ。」とのこと。
つまり、待機児童の解消をねらったわけでしょう。
どうして、幼保を一体化することで待機児童の解消が期待されるのかというと・・・
現在、全国的に「保育園が足りない!」「待機児童がいっぱい!」と言われている一方、幼稚園では定員に余裕があります。
そこで、幼保を一体化した施設とすることで、「幼稚園の施設を保育にも使って待機児童を解消しよう!」と考えたわけです。
となると、3~5才を対象としてきた幼稚園をたくさん移行して、3才未満児の待機解消に力を入れなければならないはずです。
しかしながら、新制度では、「幼稚園施設の総合子ども園への移行については、3才未満児の預け入れ(受け入れ)を義務づけない」そうです。
・・・???
それって、矛盾してません?
だって、全国で26,000人以上いると言われている待機児童の約8割は3才未満児なんですよ。
そんな「義務づけない」なんて言っちゃったら、どの幼稚園も「じゃぁ、うちはこれまで通り、3~5才児のみ受け入れるわ。」ってなっちゃいますよ。
だってだって、3才未満児の受け入れは、職員配置(対定数)や調理室の整備などなど、実はとってもお金がかかるのです。
「やりたくなけりゃ、やらなくてもいいよ」なんて、みんな「あ、そう。じゃぁ、や~らない」ってなっちゃうって!
これって、待機児童解消=少子化社会対策=若い世代への社会保障機能強化?・・・本末転倒。
さらに、認定子ども園と総合子ども園の重要な違いは、「経営形態」にあるのです。
注目したいのは、「この施設(総合子ども園)を増やすため株式会社やNPOの参入を認める。」というところです。
なんとも、信じられない。
そんなことしたら、どうなっていくかなんて素人目でも見えてきます。
「総合子ども園を普及させるためには、保育所・幼稚園の子ども園への移行が絶対だな。う~ん、でも待てよ。そんなことすると、幼稚園は絶対「OK!」って言ってこないよなぁ・・・。あ、そうだ!幼稚園は3才児の受け入れは自由ですよってことにしよう!うん、そうすればいい!でも、それじゃぁ、3才未満児の待機児童解消が弱くなっちゃうなぁ・・・困ったなぁ・・・。あ、そうだ!保育所や幼稚園以外でも経営できますよってしちゃおう!ううん、それがいい!じゃぁ、総合子ども園やりたい人?」
「え、株式会社やNPOも総合子ども園に参入できるの!?なんという、チャンス!なんという、ビッグビジネス!預けたくても預けられない子どもはたくさんいるじゃん!商売繁盛間違いなし!はーい!ウチやりまーす!」
こうなってくると、手を挙げる企業さんが増えてくるわけです。
そうなると、どうなりますか?
「う~ん、ビッグビジネスと思っていたけど、同じようなライバルが増えて、なかなか子どもが増えないなぁ。しかも、3才未満児の受け入れが増るとコストかさむしなぁ・・・。よし!経費削減作戦でいこう!まずは、先生の給料はカット!それから、給食費も安い食材やメニューに変えよう!あ、遊具も中古でいいや!それから、あれもカット、これもカット・・・」
保育の質が下がってくると思いませんか?
終いには、きっとこうなります・・・
「ちくしょう!こんなにコスト削減しても、受け入れ園児数が増えないんじゃ収益にならないぜ!どうにか、他の園と差をつけたいなぁ・・・あ、そうだ!園独自の英才教育を実施しよう!読み書き計算はあたりまえ!漢字に英語に音楽にスポーツ!あ、そうだ!ウチの園に通わせるとこんなに素晴らしい子になりますって、アピールしなきゃな。そのためには、園児の質を上げなくちゃ。よし、完成された姿を見てもらおう!」
こうして、子どもが商品になっていくわけです。
「ウチの店のバッグは最高でしょ?」と言わんばかりに「ウチの園の子ども達は天才でしょ?」と・・・。
その完成された姿をアピールするために、子ども達はどのような保育・教育指導を受けるのでしょうか?
もっと、保育と幼児教育の原点に戻ってみましょう。
子どもは、幼少期に何を学ぶべきでしょうか?
また、幼少期にしか学べないものとは何でしょうか?
飛び抜けた学力ですか?
大人顔負けの運動能力ですか?
違うはずです。
「あそびの中で」ではないですか?
一つのものを、みんなで分け合う思いやりは、机の上で育つのでしょうか?
我慢の気持ちや優しさは、ドリルを通して培われるのですか?
違うはずです。
色々と、書いてきましたが、これはあくまで個人的な意見です。
必ずしも、「そうだ!」ということではありません。
僕自身まだまだ勉強不足ですし、この制度の善し悪しは、地域によっても、とらえ方によっても様々でしょう。
しかし、ここで僕が訴えたいのは、「保育や幼児教育とは、心を育てるもの」ということです。
「三つ子の魂百まで」とは、昔の人はよく言ったものです。
保育や幼児教育とは、その子の一生を担っていることを、今一度考えさせられる今日この頃です。
MUNE
Posted by 宮古島男子保育士連合會 the男塾 at 00:15│Comments(1)
この記事へのコメント
男塾の皆さま
卒業式への祝電ありがとうございます。
m(__)m (ToT)/~~~
島袋先生が壇上でニヤリ(^.^)
私は見逃しませんでした....。
後輩を宜しくお願いします。
卒業式への祝電ありがとうございます。
m(__)m (ToT)/~~~
島袋先生が壇上でニヤリ(^.^)
私は見逃しませんでした....。
後輩を宜しくお願いします。
Posted by ぶちょー at 2012年03月11日 17:17